兎村彩野|Illustrator / Art Director

デザインと絵が頭の中で数学と国語のように分かれていった。

デザインの仕事も絵の仕事もしています。どちらも独学ですが、デザインの時、自分の思うようなデザインに組めずやや苦手意識がありました。

夫がグラフィックデザイナー15年以上と実務経験が長いので、相談して少しずつ「デザイン論」を習っています。出会った頃からの専属家庭教師レッスンで4年ほど学んでいます。最近、やっと自分の中で「どこで躓いていたか」が分かってきました。

 

私の場合、絵の仕事が先に始まったので、画面を絵で捉えてしまう癖がありました。

画面をキレイにバランス良く配置したり調えたりは得意なのですが、それが読みやすいかと言われると「かわいいけど読みにくい」になってしまいます。個性と言えば個性ですが、伝わりにくいので、自分の弱点だなと分析していました。

隣の席で仕事をしているので、夫が作業しているのを見学していると、自分とは組み立て方が違うことに気がつきました。

あれこれ質問しているときに「は!」っと閃いたのですが、今まで私の中で「デザイン」と「絵」が、ひとつの「制作(クリエイティブ)」という教科にまとまってしまっていました。夫が教えてくれるデザインはどうも絵とは違って、情報の整理整頓がメインになっています。

 

そこで、思い切って頭の中で「デザイン」と「絵」の教科を分けてみました。

自分の中でイメージしやすかったので「デザインは数学」「絵は国語」とします。

自分の脳内での捉え方を軌道修正してみました。

 

数学の先生にポエムを質問しても答えにくく、国語の先生に方程式を質問しても分かりにくい。

数学は数学のルールで学べばスムーズだし、国語は国語のルールで学べば混乱が減ります。

デザインはある程度セオリーがあるので、これは受験勉強でいうところの方程式の暗記と過去問を解きまくる訓練に似てるなと発見しました。

 

夫にデザインのコツやルールを習う。それを基準に同じようなデザインを何度も組む。

これを繰り返すことで自分が組みたかったデザインがとてもすんなり組めるようになってきました。

赤本(もしくは参考書)はデザインブックとして、夫が集めているデザインブックを見ながら付箋を貼って、どうやって組んでいるのか分からないときは質問します。塾で先生に質問するような感じです。

デザインにはあまり自分の気分や気持ちを入れずに、数学だからちょっとドライで大丈夫みたいにイメージの癖を治していくと、だんだんデザインと絵が頭の中で離れていきました。

 

絵は、自由に好きな本を読んで読書感想文を書いたり、思うことや伝えたいことを論文や詩、手紙にしてくのに似ています。

こちらはとくに混乱もなく困らなかったので、いままでのイメージをそのままにしました。

絵は過去問の繰り返しより、新しい本をどんどん読んで、自分がどう感じるか・思うかをまっすぐ入れることにしました。

かなりウェットな作業でOKとしています。

 

数学を国語で解こうとしていたので、ずっと躓いていたコトに気付き、脳内でパッキリと分けることでストレスがほとんどなくなりました。

 

苦手なものや不得意だと思っているものは、意外と自分が持っているイメージのズレ原因だったりします。全部が悪いわけでもなく、全部が良いわけでもない。ある一部分だけイメージがズレているからその小さな躓きを見つけて、ゆっくりイメージを上書き保存していく勇気を持つだけで、とても生きやすくなっていきます。

 

苦手なものは小さな点の座標がすこしズレているだけの問題だったみたいなことは私の人生には多く、面だったり線だったりすることは少ないです。たったひとつ。点を正しい座標で捉えなおす。これだけでいいんだなと思っています。スマートフォンで地図アプリを開いて、ビル街を歩くと時々ちょっとだけ自分の場所を見失ったり、違う位置にポイントがつきます。焦ればどんどん迷子になるけれど、落ち着いて現在地を押し直してみるとか、立ち止まって、今いる風景を見直してみるとか。そんなちょっとしたことで、目的地へはたどり着けたりします。あの感じににています。

 

とはいえ、そう簡単に上書き保存ができないのも人間の脳みそや心の仕組みなので、点の座標がズレているかもなぁと気付いたら、ゆっくりちょっとずつ修正していけばいいんだと思うと、焦りも不安も生まれません。不安がなければ生きやすくなります。

 

ほんの少しとらえ方を修正しただけで、4年かけて苦手意識があったデザイン作業がとても好きになりました。

 

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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