兎村彩野|Illustrator / Art Director

目は手ほどに物を言う

ニューヨークに尊敬するジュエリーデザイナーの友人がいて、もはや、友人と言うより親友のような存在です。しょっちゅうLINEをしては、馬鹿話で盛り上がるのですが、その会話の中に、時々、ふっと、物事の本質に触れるような会話が混ざります。

沢山の名言を彼からもらっているのですが、その中でも特に好きな話があります。

 

物作りには「目」が大事。それは視力がいいとかではなく、制作物の細部にぐーっと近づいて細かく観察する目と、ぐーっと引いて俯瞰で眺める目。この2つの能力を交互に使って「細部を見る」と「俯瞰で見る」を何度も何度も繰り返す。どこまで深く近づいて見れるかは集中力もいる。引くときは力を抜く。

ただ視力が良いからよく見えるとは違う、この「目」がとても大事だと彼は言います。細部にぐーっと入っていける目こそ「良い目」だと。

そういえば「God is in the detail(神は細部に宿る)」という言葉がありますが、このスーパーズーム状態の目は、細部にいる物作りの神に会いに行くような感覚なのかもしれません。細部をこだわるというのは、細部の細部まで見に行き、深く深く何度も細部で考えること。

 

私自身も制作中、かなり深く深く内側に入っていくように観察する癖があったので(ただしつこいだけかもしれませんが)なんとなくそんな感覚が「ある」と知っていたのですが、彼が言葉にしてくれたおかげで、とても腑に落ちました。

 

世の中の「上手い作品」と「良い作品」の差は、まさにこの「深い観察」と「力まない俯瞰」のコントラストの差かなと思っています。すなわち、上手い作品は手で描いていて、良い作品は目で描いている。そう私は感じます。【目は手ほどに物を言う】なんていう新しい諺がつくれそうです。

 

手の技術は表に現れやすいので「上手くなる」は比較的訓練でどうにかなるのですが、目の能力は自分自身の潜在的な物作りへの愛情が創り出す好奇心を含んだ集中力のようなものなので、心のあり方を調えて純粋に物作りを愛していかないと育ちにくいのかもしれないです。

 

毎日、絵を描いたりデザインしていても、不思議と飽きることはなく、なんとなく楽しいです。それは制作中にふっと細部に入ってく瞬間があり、すーっとワープするようにズームするその感覚がどうしようもなくワクワクします。目を大事にしていきたいです。

 

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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