兎村彩野|Illustrator / Art Director

寝てるウサギの絵

筆のメンテナンスをしていたら、高校生の時に初めて自分で買った画材が出てきました。絵の具用のナイフです。

絵を描き始めた頃、展覧会で見た油絵をガサガサにしたタッチをしりました。とても気に入りました。が、どうやってそれを描くのかサッパリ分からずで、父親に相談したら「ナイフ」というモノがあるらしいと知りました。

街に1つだけ絵の道具がちゃんと揃う画材屋さんがあったので、学校帰りに寄って「ナイフ下さい」と店員さんに伺ったら色々出して下さいました。どれをどう使ったらあの理想のガサガサになるのか分からずで大苦戦。今のようにスマートフォンで写真を見せることも出来ないので言葉で表現します。なんとか店員さんのアドバイスでこの1本を選びました。

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家に帰って、アクリル絵の具で作ったベースに、違う色を塗り、乾く前にナイフの先端でガリガリ搔いてみると描きたかったタッチが出てきてとても感動したのを覚えています。

あの日からこのナイフは妙に気に入った相棒になり、買い換えることなく20年使っています。だいぶ先端は歪んで丸くなってきていますが、全部自分で汚したナイフなので愛おしさがあります。

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ひさしぶりに夏休みは絵の具で絵を描きました。最近はPCでばかり描いていたのですが、コマンドZのない世界もワクワクします。唄うように描きます。音の色を重ねていきます。直せるけど戻れない道。絵は自分の心に会える静かな時間なので好きです。

絵を描き始めて20年が経ちました。心が辛くて描けない時期もありましたが、辞めなかったので今日まで続いています。休み休みのゆっくりした絵の道ですが、手放さず仲良く今日まで一緒にきました。

辞めなかった人だけが見える景色を、これからも描いていきたいです。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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