兎村彩野|Illustrator / Art Director

新しい絵が描けるようになる日。

締め切りがゆるめの空いてる時間は、絵の練習や新しいタッチの発掘・テストをしています。他の人が描いた気になった絵はピックアップして、どういう構成なのかやどういう手順で描いているかを分析したりもします。観察という練習です。

配色も自分の感覚は好きだし自信はありますが、それだけだと偏りがでるので、自分では組み合わせない色を見つけたら記憶していきます。好きか嫌いかではなく「この配色もありだなぁ」と客観的に分析します。実際に塗ってみてどう感じるか、配色は面白くて、塗る順番でも感情がかわるので、何回か塗り順を替えたりもします。

 

私でいうところの練習や勉強はデッサンとしてのテクニックの実技と言うより、絵の根本的仕組みの分解に近い作業です。今の自分では持っていない手法を、分解して考えて組み立てる。自分ではない絵描きさんならどんな手順で描くだろうと妄想する。正解かどうかはあまり関係なく「組み立て力の訓練」これがかなり力になります。「自分がどう物事を考えて、どう物事を捉えて、絵を描いているのか?」これが組み立て力に全部赤裸々に出ます。練習をやめるとすぐ頭の中が堅くなるので、練習と勉強自体が内側の自分のストレッチにもなっているような気がします。

 

そんな練習や勉強を繰り返していると、あるとき(私の場合は1〜2年に1度くらい)自分の中で今までと全く違う配色がふわっと生まれたり、今まで描けた線がぐんと伸びで新しい世界まで伸びていきます。突然変異のようなことが身体や手に起きます。その線も色もビックリするくらい自然体にすーっと気持ちよく身体の内側から出てきます。

 

この瞬間が、描いていて一番嬉しい感覚です。ほんのかすかな光がバーンと爆発して広がるように感じます。何かに似ているとすれば、はじめて前転が出来たときや、鉄棒の逆上がりが出来たときの感じに似ていると思います。正直、なぜ絵なんか描いているんだろうとたまに思うんですが、描いているときより、身体の内側の自分にしか分からないビックバンの達成感に会いたいからだと思います。誰かから評価されるわけでもなく、ただ、自分がうれしいだけの。たった瞬間の、本当にたかだか数日の高揚感のために。

 

study

 

何かが上手くなるのは少しずつ上手くなるより、小さな成長が蓄積されてその時の自分の限界まで貯まるとバーンと爆発してぎゅん!と大きな成長をして伸びる。これを繰り返しているように思います。

 

なんとなくそのうちBOMB!が来るはずなので、焦らずに日々地道に。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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