兎村彩野|Illustrator / Art Director

千切れるほど着たTシャツとの別れ

3年くらい前に大好きな漫画家の山本直樹さんのTシャツと綾波レイのTシャツを買った。

音楽とのコラボブランドなので楽器の絵がちゃんと楽器で、しかも書き下ろしで。

 

だいぶ気に入っていて、夏の間はしょっちゅう着ていて、しまいに着すぎてエリがちぎれて取れてしまった。パジャマに格下げしてからも日々のローテーションの2枚に入っていた。

Tシャツというものはゆっくり劣化していくので時間をかけて生地が薄くなっていき、最近ではカラダがうっすら透けてくるくらいに薄くなり、これちょっと寒いなぁと感じるほど着た。

 

あまりモノを持たなくなってから、気に入ったモノだけを少ない数でなんでもローテーションさせるので、どれもだいたいお気に入りなのでボロボロになるまで使ったり、着たりする。

Tシャツなんてネットでもお店でもすぐ買えるし、そんなにボロボロになるまで着なくてもいいのかもしれないけど、好きで手放せなくて「今日まだ着れるかな?」とだましだまし過ごしてきた。

 

今朝、なんとなく、晴れて良い感じの光が入るリビングであらためて2枚並べたら、やっぱりすごくボロくなっていた。

これは本当に、あきらめて手放す日がきたなぁと納得した。くるっとまるめて手の中にいても、なかなかゴミ箱に捨てられず、やっぱり箪笥に戻そうかなとか、でもやっぱりもう着るには厳しいから箪笥から減らそうかなとか、1時間葛藤しつつ、最後はゴミ箱に捨てた。

 

3年間よく着たなぁとベランダで富士山みながら少しぼけーっとした。どんな好きなモノでもいつかは手放す日が来る。その見極めみたいのは大事で、その日まで、日々はどれだけ好きでいられるかは大事だなと思った。

 

たかがTシャツ。それでも。Tシャツですらこんなに別れが寂しい。結構ちゃんと「好き」と向き合って生きてるなと思った。

 

 

明日あたり、バットマンのTシャツが届く。またすごく好きになって、ボロボロになって別れる日まで一緒に暮らす。

 

 

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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