兎村彩野|Illustrator / Art Director

紙の本と漫画のある未来を買っている。

「漫画が売れない」「本が売れない」というニュースを見る度に、世界から紙の本が少しずつなくなっていく風景が見えます。

もうすぐ未来では、紙の本は全くゼロではないけれど、今より限りなく減っていくだろうと想像しています。贅沢な嗜好品というものになり、今で言うところのレコードやカセットテープのような存在や価値になっていくのではないかとぼんやり感じています。

今、月のお小遣いの半分以上を紙の本と漫画を集めるのに使っています。洋服より、立派な家に住む家賃より、豪華な外食より、美容や化粧品より、私の興味は紙の本にあり、本代にいそいそと費やして本棚を肥やしています。

誰かが「これ好きそう!」「コレ面白いよ」と勧めてくれたモノはなるべく触れるようにしています。知らない世界に出会うのは誰かの小さな手招きだったりすることが多く、本や漫画はとくにそういうものだなと思っています。

お金の楽しい使い方とはなんだろうと考えるとき、私は未来が買える物を最優先で選択しています。今集めている本は、死ぬまでに全部読めないかもしれない。読んでも忘れてしまうかも知れない。それでも、残された人生を使い切って、集めた紙の本や漫画を読み尽くして生きて行けたら最高だなぁと思っています。

すなわち、私はお小遣いで人生の本棚をずっと地道に拡張している。これはもしかしたら飽食と同じような、飽読かもしれない。良いか悪いかはまだ不明。

 

私は考え事をしながら好きな本や漫画を読んでいるときが一番幸せな時間で、知らないことを知ったり、美しい表現に出会って頭の中で見知らぬ架空の世界を風景として眺めたりするときに、とてつもない幸福があり、静かな時間という言葉のプールの中を泳ぐようにふわふわしていることが喜びです。

 

未来を買うためにお金を使う。これはとても楽しい作業だなと思います。自分の未来を描いて、そこに対して自らタイムカプセルを埋めていく。

今日の飯は大事。とても大事。まずそこを安定安心させるのは日々の大事なことで、その先、今日の飯がなんとか賄えるようになったら。現在に使うだけでなく、未来を見て、未来に投資していくのは「明日も頑張ろう!」とか思えるのかも知れないです。明日も頑張ろうは、段取りの先にあるモノ。

 

私は紙の本と漫画のある未来を買っている。今日も好きな本を読むし、未来で待っているこれから読むであろう未知の本に会いたいから、今日も一生懸命自由に生きて、少し未来に近づいている。紙の本が犇めく本棚で作る未来風景。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
SNSでフォローする