兎村彩野|Illustrator / Art Director

長く長く時間をかけて受け入れていく、自分に嘘をつかない自分らしさとは。

この1年、仕事の移動がなかなか大変で、都内に引っ越しをしようと家を色々探していました。家探しから帰ってきて引っ越しの事を考えてぐーと寝て。朝、カーテン開けて富士山と目が合うと「ここでいっか」と思わせます。

 

移動距離の疲労や移動時間は否めないのですが、その全部を「まいっか!」と思わせてしまう富士山ってものは、本当にすごいいなぁと思います。ベランダから見る夕焼けと富士山の美しさ、澄んだ空気、どうしても23区で見つからない物であります。不思議。

 

山崎まさよしさんの唄みたいに「いつでも探しているよ どっかに君の姿を」これがなにかっていうと、私には探しているのは人ではなく純度の高い何かのようです。それは富士山だったり、抜けるように気持ちよい空気だったり、夕焼けだったり、海だったりなのかもしれません。そういうものが「本物だった。やっぱり。」という確信といいましょうか。

 

偽れない感覚が自分の中にあり、それはもしかしたら他の人より強く感じるのかも知れず、もうそろそろ、その感覚と折り合い付けて生きていくしかないんだろうなぁと思っていました。敏感だったり繊細だったりするのはきっと意味があり、時には大変なこともあるけれど、大変なおかげで、もしかしたら素敵なモノをたくさん見ているのかも知れない。たくさん色を感じたりしているのかも知れない。

 

その事を受け入れるための鵠沼海岸暮らしと家探しだったのかもなぁとこの3年の時間を思い出していました。本当に長く長く時間をかけて受け入れた感じがした週末でした。

 

結果。都内への引っ越し計画は破棄し、富士山ともう少し一緒に暮らしていこうとなりました。

「引っ越し代が浮いたから、箱根にハイキング行ったり温泉行ったりしよう。」と、長く相談に乗ってくれていた夫に伝えました。山の上で美味しい昼ご飯でも作ろうと思っています。どんな選択肢も、夫は私の身体が楽であれば「いいよ」と言ってしまう人です。私が答えを見つけるまで待っていてくれた。私なりのお礼を含む本心であり、受けれることが出来たことの報告の言葉でもありました。夫はそういうのも分かってしまう人です。

 

昔の私ならきっと引っ越していた。条件や効率をもっと簡単に選んでいた。

鵠沼海岸に住んで3年。少し不便とか、少し大変とか、少し思い通りにいかないとか、思うことはいくつかあります。「少し足りないくらいが、なんかいいんだよね。」と分かり、心が自然とそう思える余裕があって、なんだか自分が変わったなぁと感じています。本当に自然に変わりました。

 

昔、こういう感情を持つのは諦めることだと思っていました。けれど、どうやらそうでもないらしい、と。「まあまあかな。良い感じだよ。」そのくらいが実は一番面白いという気付きでした。笑顔で「まあまあかな。」と言えるくらいで見つけるものは本当にすごく素敵です。地味で目立たないけど、本当にとてもとても素敵。

 

これからも呑み会は先に帰ること多いですし、相変わらずみんなにとってなかなか会えない友人の一人かも知れませんが、ここで元気でやっていれば大丈夫。富士山を見ながらみんなをゆっくり思い出したりもする。

 

本当の自分を愛するために大事にするために、自分に嘘をつかないで生きてみる。そっち側を選んでみる。自分に嘘をつかない人にしか見えない自分らしさは確かにあります。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
SNSでフォローする