兎村彩野|Illustrator / Art Director

幸せのハードルの高さの測り方

たまに人と話していて恋愛や仕事、幸せについての話題になります。

「兎村さんはいつも幸せそうですね」とか「どうしたら好きな人に出会えますか?」と質問を受けますが、たぶん、30代の途中で人生のハードルの高さの測り方を自分なりに見つけて、ドカンと自分のハードルを下げたので、それからはずっと幸せで、すごく好きな人と出会って結婚できたんだと思います。

 

私流の幸せのハードルの高さの測り方なのですが、「身の丈」をゼロとします。自分の「理想像」と「身の丈」の差。これが幸せのハードルの高さ。たったこれだけのことなんだとある日発見しました。

それから自分の「身の丈」をなるべく客観的に感じるようにしていて、夢や理想より、身の丈を把握することにエネルギーを使うようにしています。夫にも「私が身の丈を越えて調子に乗っていたら一声かけてね」とお願いしています。

夢や理想像を持つことは悪い事ではないのですが、身の丈を受け入れるよりキラキラかっこよく見えたり、なんかよさそう!という情報が世の中に大量に溢れているので、つい引っ張られます。身の丈を受け入れる方が本当は大切なことなのですが、地味なのでイマイチかっこいい記事にならないので情報として出てきにくいのだと思います。

 

キラキラした甘い夢はどんどん人の弱い心を引っ張り、甘い甘い綿菓子で出来た雲やキラキラ輝いてみえる風船はどんどん遠い空まで人を浮かせて連れて行きます。身の丈と離れ行く自分の理想像。この高さが、その人の幸せのハードルの高さになっていきます。足の着かない遠い地面から離れた夢だけの空の中で生きていると不安になるのはこのせいなのかなと思います。人は本能的に地面から離れると危ないので不安に感じるようにできているのだと思います。

 

甘い綿菓子の雲も、風船も、その正体は実は自分の中にある「見栄」「勘違い」「嫉妬」「比較」のような「欲」だったりします。

人の心には生まれた時から「見栄」「勘違い」「嫉妬」「比較」という「欲」のようなモノがほとんどの人にインストールされています。言い換えればもともと持っているモノです。全面に出す人もいれば、隠し続ける人もいますので、見え方は変わりますが、存在しない人は本当に少ないと思います。

 

もともと持って生まれてしまっているから、その感情を否定するコトは出来ず、うまくやっていくしかない。それが幸せのハードルを下げるポイントになります。「そういう感情がある」と受け入れて、1つずつ「欲」を手放し空へ返していく。手放せば人より心は軽いので勝手に空へ消えていき、どんどん地面に近づいていきます。

 

欲を手放せば手放すほど、自分の身の丈が見えるようになります。そして身の丈と今の自分が近づけば近づくほど、幸せのハードルが下がり、自分の「ピッタリ」が見つかっていきます。ピッタリの仕事、ピッタリの恋人、ピッタリの家、ピッタリの服、ピッタリのお金、ピッタリの暮らし。

「見栄」「勘違い」「嫉妬」「比較」と書いた小さな風船や雲をいくつかだけ持っていたとしても、身の丈の自分の地面が見えていて、どれくらい、今、差があるか分かっていけば健康でいられます。この差を維持できる量が人によっても違うので、自分はどのくらの差まで大丈夫かを知るために、友だちと話したり、人生の先輩に相談したり、本を読んで学んで行くのだと思います。

 

たぶん、私が日々なんとなく幸せで、好きな人が隣にいることに自然体で感謝できるのは、身の丈の自分を毎日よく観察していて、無理をしないからなんだろうなぁと思います。強がらないというのはなかなか良いなぁと思っています。「負けるが勝ち」は人と比べての勝ち負けではなく、さっさと自分に負けたら楽になるよと言う意味なのかもしれません。

 

 

昔はジェットコースターに欲望を乗せて生きているような品のない生き方をしていました。仕事も恋愛も理想だけで、本当の自分を顧みず、空を飛び越えて宇宙を目指していました。それも若かったから出来たことかもしれません。分からないコトだらけで我武者羅でした。

最近、衰えてきて、そんなエネルギーもなくなってきて、身の丈の自分を素直に受け入れて、持っていた風船も砂糖菓子の雲もほとんど手放してしまいました。手放して地面に足が着いたとき、そこには今の夫が待っていてくれました。なるほど、ピッタリの人だ。

空を浮いているのは気持ちいいけど、地面も悪くないし、地面からは空も宇宙もみえるので、実は特等席なんだなぁと気付きました。身の丈という地面は、実はハードルゼロメートルな幸せの特等席だったりします。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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