兎村彩野|Illustrator / Art Director

マイケルジャクソンのリピートボタンを押して。

ラジオや音楽を聴くのが好きです。日中の仕事中はだいたいラジオで、radikoのタイムフリーの恩恵を存分に味わっています。

 

音楽に好きなジャンルはあまりなく、なんとなくいいなぁと思えば聞くような、フリー雑食です。聴くので雑聴かな?

その中で、なぜかずっと聴いてこなかったものがあり、それがマイケルジャクソンでした。

よく音楽好きの友だちに驚かれるんですが、小さい頃からラジオで育ったので、マイケルはラジオからかかるので、あらためてちゃんと聴こうとするタイミングを失っていました。

正座してマイケルの音楽と向き合うと言うより、ラジオから時々流れてきて「あ、マイケルさんこんにちは」という感じでカウンターで横に並んでいる感覚の音楽でした。

 

先日、レゴバットマン ザ・ムービーを見に行ったら、劇中に使われていたMan In The Mirrorがびっくりするほどかっこよく、家に帰ってすぐにサントラを購入しました。何回も何回もリピートで聴いているうちに、歌詞が耳に残るようになってきたので、意味をちゃんと知りたくなりました。

 

つたない英語と、現代のドラえもんGoogle翻訳、歌詞解説BLOGなどを駆使して歌詞を読み進めてみると、なんという素晴らしさ。衝撃が走ってしまい、ラジオで流れてくるマイケルさんどころではないと、なんだか本当に、マイケルジャクソンを心から聞きたくなりました。

 

CDが届いてプレイヤーに入れて、心を正座させてマイケルジャクソンの音楽を聴きました。なんということでしょう。すごくすっと入ってきて、すごく素敵で、すごく感動。

マイケルジャクソンが持っていた傷みや悲しみ、この世界の風景、そんな世界を想像すると、なんと優しいまなざしなのだろうと、やっと37歳にしてその人類の宝物のような音楽に入学することが出来た気がしました。

 

アメリカと世界の歴史を知らないと、歌詞の深いところまでは感じられなかったり、きっともっと背景にはすごい景色が広がっているのだろうと分かるのですが、自分の知識がなさ過ぎて、その深い場所にすら降りて行けないもどかしさを感じます。

 

年を取って知識が増えてきたり、感じるコトの繊細さのツボが増えていくなかで、やっと分かってくる音楽や、デザイン、アートがある。突然その日はいつもやってきて私を驚かせるし、驚くことを心底楽しんでいる。そのために長生きしたいと思っている。

とくに、傷みや悲しみ、心の奥で持っていて外には出さない大切な物、そこにすっと届いてくるとき、やっと意味が分かってきて、どうしようもない喜びがある。蘊蓄ではなく、私の人生の用意が調うと心の隙間に光のような速さでスッと「本物」がやってくる。

 

いつどこで何が分かるかはわからないけど「これだったのか!」と分かるきっかけに気付いた日はCDやiTunesのリピートボタンを押して自分にしか見えないキラキラしたものをずっと内側で噛みしめていられる。音楽のリピートボタンを押すのは、とても神聖で特別な物だと私は思っている。

そんな日は、そんなに多くないから。

マイケル、すごい。

 

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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