兎村彩野|Illustrator / Art Director

努力して得た技術は何のためにあるのか

若者から「なにかアドバイスをください!」」みたいなメールやコメントをもらう事がある。

今のところ、私から出てくる言葉は

「がんばって練習して上手くなったらいいと思うよ。努力と技術は自分を裏切らないから。」

くらいしかないなぁと思う。

 

好きなコトでも嫌いなコトでも、続ける為には努力は必要で、ではなぜ努力をするのかと聞かれたら、努力で手に入れた「技術」があると、自分の心の中にある景色をより広く再現できるからじゃないかなと思う。

 

景色と技術は対になっている能力で、景色は心と身体全部で感じて自分の中に作り込む世界。この世なのか、あの世なのかもわからないけれど、もしかしたらそれは未来なのかも知れない。

それがなんだと聞かれたら「なんだろうね?」と答えてしまうけど、人の身体の中には思い描くという能力があって、どこまでも自由に好きな世界を作り続けるコトができるようになっている。

その美しい景色をアウトプットするのに必要なものが技術。経験も私の中では技術の一部。

 

努力して技術を増やして行くと「こんな感じの世界なんだ」という感じをみんなが見ている、生きているこちら側の世界に表現するコトができる。

これが仕事だと思う。

クリエイターや芸術家だけが表現をしているように言う人もいるけれど、それは見た目が分かりやすいだけで、実は生きている人はみんな身体の中の景色をアウトプットすることを仕事にしている。

接客業なら気配りと呼ばれたりするし、製造業なら設計と呼ばれたりするかもしれない。科学者ならタイムマシーンなんかもそうかも。

PRなら広告宣伝の戦略だし、お花屋さんなら明日売るブーケのデザインかもしれない。

仕事とは生きてる人間が、こうなって欲しい未来を想像して、みんなで世界をパーツ分けして作り続けるアウトプットなのだと思う。

 

このアウトプットに技術は大切な役割をしていて、技術が増えるとイメージに近いアウトプットが早くできるようになるので、アウトプット自体がとても楽しくなる。

楽しくなるともっと頑張れるし、その時やっと「あぁ努力ってこのためにしていたのか」と後から気付く。

 

最近、新しい描き方をまた見つけて、こうやったら出来るかなぁと再現してみたら、20歳の時よりずっと早くイメージに近いアウトプットができた。

キレイに早く再現できるってとても楽しくて、体中が繋がったような感覚があった。

あぁそうだ。そうそう。コレがしたかったの。20歳の自分に自慢したくなった。

 

努力はなんの為にあるのか。未来の自分に褒めてもらうためでもあるし、再現する快感を味わえるためでもある。

今、もしちょっとしんどい人や頑張れない人がいたら、ゆっくり休憩しようって声をかけたいし、休憩して元気になったら、また努力をたのしもうって伝えたい。

未来は待っていてくれるから、今のしんどいが報われるかも知れない。

いつか努力の先に、自分にしか見えない景色を再現する技術が待っていて、その技術でアウトプットした世界を喜んでくれる自分以上の人数の他人がいる。

 

自分はひとり以上増えないかわりに、他人は自分より多い。

これはとても素敵なこと。

自分の為に努力してまずは0(ゼロ)から1までがんばってみる。

1がつくれたら他人の為に努力する。そうすると2以上無限大。

無限大ってかっこいい。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
SNSでフォローする