兎村彩野|Illustrator / Art Director

やりたいコトはそんなにたくさんできない

20代後半から30代前半の数年間、「メルヘンキャンプ」という名前でアウトドアの仕事をしていました。雑誌にアウトドアの記事の連載をしたり、テレビの撮影のキャンプのセットを組んだり、メディアに出てみたり。レシピ開発、新しい道具のテスト。なんだかすごく沢山のコトをしていた気がします。

遊びだったアウトドアが仕事になって最初は楽しかったのですが、如何せん用意や下準備に時間がかかるので、段々とデザインやアートディレクション、イラストの仕事がおろそかになってしまったり、表に出る仕事が自分の生き方には合っていないなぁとストレスを感じるようになりました。

 

4年前夫に出会ったときに、断捨離の楽しさを知り、モノを減らす中で、人生の時間の使い方にも気配りが出来るようになってきました。

 

今の年齢で今しかできない仕事。自分は今、何をしたいか?とすごく考えて(たぶん1年くらい考えていた)10年後の自分のために、アウトドアの仕事を手放して、自分が一番したい、デザインとアートディレクションとイラストの仕事だけに戻りました。ちょうど3年ほどたち、今の自分を客観的に見ると、あの日の選択(もしくは決断)は、あっていたなと感じます。

 

決断してからの3年。一度もふらふらすることなく、ひたすら選んだ仕事をし続けて、ここ最近、心が底から全部じんわり満たされるお仕事に出会える回数が増えました。働くことで常に問題や面倒には出会いますが、その先の今できることの最大限の達成感や筋道が想像できるようになって来たので、日々が充実しているなぁと感じますし、裏方の仕事はやはりとても合っているなと感じます。

表に出る仕事を少ししてみて、色々学ぶことが多かったので無駄だとは思っていませんが、人には向き不向きがあり「やればできる」ではなく「やりたい」をやらないと、結構しんどくなるも分かりました。「やればできる」には見えない我慢が多いので「やればできる、けど、やらない。だから手放す。」という意識に変換していかないと、ただの便利な人になってしまうんだなぁというのも分かりました。

 

一日はたったの24時間で、そのうち8時間は寝ていて、寝ぼけた時間と、家事の時間と、読書の時間を引くと、集中して作業できる時間は12時間程度しか無く、この貴重なる12時間をどう使うかが日々の大事なポイントになっています。思っているより、あれもこれも出来るほど1日は長くないと感じます。1日がそんなに長くないので、1ヶ月も1年も、とても短いぞと理解できてきました。

 

子どもの頃や20代の頃、願えばなんにでもなれると思っていたし、やりたいことはなんでも出来ると思っていましたが、36歳になった今「どうやら、そうでもないらしい。」という現実と向き合うことが増えました。「どうやら、そうでもないらしい。」と分かってはいても、それでも年齢や環境に弱音を吐かず、未来の夢を持つことが大変ではあるけど楽しいとも感じます。「どうやら、そうでもないらしい。けど、諦めないぞ。」これはかなり体力がいりますが大事なんだなぁと実感しています。30代後半からの夢の叶え方というのは「どうやら、そうでもないらしい。」という受け入れが起点にあり、どう今、持っている自分の手数で「そうでもないらしいこと」をクリアしていくか、なのかも知れません。

 

40代までの残りの使い方は、もう大体決めたのでひたすらコツコツ日々、その目標に向かうだけですが「やりたいコトはそんなにたくさんできない」を毎日心の中に留めておかないと、また「やればできる」に振り回されてしまいそうなので気をつけています。

 

短い人生、後悔や挫折は何度でもやってくるし、心や肉体が弱っている時、不意に不安なんかが忍び寄ってきてしんどくなったりもしますが「やりたいコトはそんなにたくさんできない」と少し落ち着いて、焦らずに、日々を前に進めていくしかないし、それが生きているというコトなんだろうなぁ。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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