兎村彩野|Illustrator / Art Director

心が悲しかったことを解決するために、失敗に寄り添う物作り。

自分の成人式の写真撮影を大失敗してから、もう20年くらい「あの日の失敗とあのとき感じた悲しみはなんだったのだろう?」と記憶に寄り添ってきました。ご縁あって写真業界から仕事が来てから、ずっとあの日の自分の欲しかったモノを作っている気がします。

20年くらいもやもやしていた気持ちに寄り添って、企業とプロダクト開発していたら段々と結果がでてきました。私がお手伝いしているcotowaシリーズ。今、有り難くもオーダーがたくさん入ってきました。

 

 

先日、cotowaの世界観撮影でした。いつも通り下準備して、いつもの仲間と撮影。この2〜3年分のチームみんなの気持ちがぎゅーっと詰まってカタチになって「これだよね。これがみんなでしたかったよね」と気持ちがひとつになって可視化された感じがしました。スタジオでみんなが嬉しそうで、私も嬉しかった。

 

失敗はすごく大事だなと思う。悲しみも。

忘れた方が本当はラクに生きていけるのは分かっている。それでも、たまには残しておいて、「どうして悲しかったのか?」を考えるようにしています。

 

「私が本当に欲しいものはきっと誰かも欲しいもの。」
「私が悲しかったらきっと誰かも同じ部分で悲しい。」

 

成人式の写真に失敗した19歳の私を幸せにするのは39歳の私。あの日悲しかった気持ちに寄り添うことで、19歳の私はゆっくり癒されていく。その感覚が、今、この世界にいるどこかの19歳の役には立つはず。

自分を癒すのは私の最初の仕事。私すら癒せないなら、ほかの人のことなんか癒せるわけないなぁと思う。ちゃんと悲しみを癒せたら。その癒し方を応用して、より多くの人の癒しに変換していく。これが私の仕事。

誰も見たことがない素晴らしい新製品を作れるスゴい人はいる。これは事実。でも、新製品はそんなに「スゴいもの」だけでなくてもいいとも思う。心が悲しかった部分を解決するために製品をつくる。そういう作り方が意外なヒット作品になったりする。たとえばcotowaみたいに。

私、完全に、後者のアートディレクターだなぁと思う。

 

来年、自分でダブル成人式をします。その撮影をもって、私の成人式の写真の呪いは卒業とする。

by
Illustrator / Art Director 兎村彩野。1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウトドアの絵を得意する。ドイツの万年質LAMY1本で描く「LAMY Sketch」が人気になる。
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