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2019年、一番使った道具は60cmの金尺だった。

「万年筆で使いやすい気に入った文具がないから作ってみた。」

 

私のちょっとした気持ちから始まった文具作り。

誰かに頼まれたわけでもなく、商売としてちゃんと儲けようと思ったわけでもない。自分の欲しい文具がないから自分で文具を作った。それだけだった。

 

作った文具を、たまたま手紙舎の方に見ていただいたら「イイですね!良かったら紙博に出展しませんか?」その一言で兎村文具店はふわっと誕生します。

 

最初は「自分の書籍」と「兎村一筆箋」だけでした。そこから2年。なんとなく欲しいものを作り続けていたらどんどん製品が増えて、今のラインナップになりました。

 

兎村文具店:https://www.usamurashop.com

 

 

絶対ルールは「私が使いたいものを作る」これです。ペルソナが私。

文具なのでロットの関係でかなり余剰ができるので、私と似た「なんでこれがないんだろう?」に共感して下さる方たちに少しずつこっそり販売していくスタイルです。

私が欲しいものだから、機能が分かりにくいし、2秒で「かわいい!」と思えるだけの文具たちではない。馬鹿売れするような文具じゃないよなぁと言うものばかりです。

 

癖が強いし、決して安くない文具でも、時々届くファンレターメールに励まされたり、イベントでお会いする方たちとお話しするのは本当に心の底から楽しい。作ったモノを愛用してくれる人が見えるし会える。こんな素晴らしいことはないなと感じています。私の中では、ユーザーという代名詞ではなく、ひとりひとり名前の付いた素敵な「人」です。

 

今年。オンラインストアを作り、イベントに来れない遠くに住む方でも手に入れることが出来るようになりました。イベントで完売したモノも待っていただければ再販しています。慣れない通販ですが、少しでも良くなるように工夫改良をしています。

 

文具はサイズが小さく軽いのと、買って下さる方の大事なお小遣いを頂戴するので、なるべく送料を抑えたいなと思っています。オンラインストアを始めてから「モノを誰かへ届ける」ということをとても考えるようになりました。今年の半分はそれを考えていたように思います。

 

「私が使いたいもの」しか作っていないので、買って下さる方の心と必ずどこかが共鳴しています。どうしたらほどよい感じに届けられるんだろう。これはもう自分の中の仕事とか趣味とかを越えた「人が人になにかを届ける」というものすごい大きな宿題になりました。その宿題を永遠に解いているような感覚です。

 

モノを届けるには梱包があったり、発送業務があったり、送料計算があったり。私が手で持っていくことはできないので、社会にある色々なサービスを借ります。そのサービスもまた誰かが作ったものです。サービスにはルールがあるので、ひとつずつ調べて覚えて比較検討していく。

 

世界は繋がっていて孤独ではないけど、何かを届けるにはとても絶妙な社会バランスで成り立っていて、奇跡みたいなもの。必要だから生まれた奇跡だけど、当たり前ではない。文具が私に教えてくれたのは、そういう人と人が見えない場所で繋がりつづけてバランスを保っている奇跡でした。

 

我慢はしないし私が使いたいモノだけど、少しの工夫でどうにかなるなら、ちゃんと送料を抑える。運びやすい形状にする。受け取りやすくする。作って終わりではない物作りを楽しんでいます。

 

 

2019年。一番使ったアナログの道具は60cmの金尺でした。万年筆よりテプラより紙より使っていたように思います。ひたすら計りまくっていました。「この数値ならいけるかな」と実験をする。自分の為に計るし、人の為に計る。この60cmの金尺が教えてくれたモノは一生私の中に残りそうだし、これから先の仕事にも影響を与えるだろうと思っています。

 

「人が人になにかを届ける」

 

私が届けたいのは文具なのか、便利なのか、楽しいなのか。

その全部なのか。もはや私なのではないか。

私は私を60cmの金尺で計っていたのではないか。

 

年末なので、ふっと。思ったことを書いてみました。

by
Illustrator / Art Director 1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にイラストレーターとして活動を開始。暮らしのシンプルな絵が得意。愛用の画材はドイツの万年筆「LAMY safari」。